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胃がん検診のABC分類について

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2012/03/03

皆さんは会社の健康診断で、胃の判定部分にある「A」「B」「C」と分類された表を見かけたことはありませんか?
この「胃がん検診のABC分類」は2つの検査法の結果によって胃がんになりやすい人を選ぶための方法で、市町村の胃がんリスク検診として用いられることがあります。その2つの検査法とは「ペプシノゲン検査」と「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」です。
まずはこの「ペプシノゲン検査」と「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」について詳しくご説明させていただきますね。

●ペプシノゲン検査
ペプシノゲンは食べ物の消化に関与する「ペプシノゲン」という物質の血中濃度を調べることで胃粘膜の萎縮=胃粘膜の老化の状態を調べる検査です。胃がんの多くは萎縮した胃粘膜から発生することが知られていますので、「ペプシノゲン陽性≒胃がんになりやすい」と言えるのです。(詳しくは当ブログ内の記事「ペプシノゲン法について」をご参照ください)

●ヘリコバクター・ピロリ抗体検査
(1)まずは「ピロリ菌とは何なの?」というところからご説明したいと思います。
ピロリ菌は1983年にオーストラリアで発見された長さ2.5~3.5μm、幅0.5~1.0μmの細菌で、胃に住み着いて胃がんを引き起こす原因物質とされています。らせん状に湾曲した形で、「鞭毛」と呼ばれるひげのような長いしっぽにもみえるものを数本持ち、これを回転させることで活発に動くことができます。従来は、胃の中は胃液に含まれる塩酸によって強酸性(なんとPH1~2)であるため、細菌は生息できないと考えられていました。ところがヘリコバクター・ピロリ菌は自分の周囲に「ウレアーゼ」と呼ばれる酵素を産生して胃粘液中の尿素からアンモニアを産生して胃酸を中和(PH7程度)しているので胃の中でずっと生息(これをピロリ菌の感染といいます)できるのです・・・・なんだか、とてもクレバーな奴ですね。ピロリ菌の感染によって、萎縮性胃炎をはじめとする慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんになりやすくなることが分っています。
(2)次に「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」についてご説明させていただきます。
胃の粘膜がピロリ菌に感染すると、ピロリ菌に対する特異的な抗体ができ血液中に産生されます。その抗体を血液検査や尿検査で測定して高値であれば、「ピロリ菌と接触したことがある」と考えられます。この「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」はヘリコバクター・ピロリの感染の既往(≒胃がんになりやすい)を検索するスクリーニング検査として広く用いられています。

そしてようやく本題、「胃がん検診のABC分類」でしたね。
上記に書いた、胃の萎縮度を測る「ペプシノゲン検査」と、ピロリ菌への反応(抗体)を調べる「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」を組み合わせることで「胃癌になりやすさ」をABCの3群に分類して判定するのです。

*ペプシノゲン検査とヘリコバクター・ピロリ抗体検査を組み合わせると以下のようになります。

いかがでしょうか?見覚えのある表ではありませんか?
各群の解釈については以下のようにされています。

《A群》
胃がん発生の可能性のリスクが低い、比較的健康な胃粘膜です。胃の病気になる可能性は低いですが、他の胃の病気にかかる可能性もありますので年に1度は胃がん検診一次検診(バリウム検査など)を受診しましょう。
《B群》
ピロリ菌に感染している可能性が高く、消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)などの病気にかかる可能性があります。胃がんの可能性もあるので2~3年に1回は内視鏡検査を、毎年胃がん検診一次検診(バリウム検査など)を受診しましょう。
《C群》
胃粘膜に萎縮がみられ、胃がん発生のリスクが高い状態です。また他の胃の疾患も引き起こしやすいやすい状態といえますので1年に1回は内視鏡検査を受けて病気の早期発見に努めましょう。

このABC分類では、この判定結果がB・C群の方はハイリスク群に当てはまりますので胃内視鏡検査を二次検査として受診していただく案内通知が届く場合があります。このABC分類を用いて、胃がんになりやすい人たちに対して、より効率的に胃内視鏡検査を組むことができるということです。

いかがでしょうか・・・
本章はこれにて終了しますが、実はABC分類の盲点・欠点もあります。
それは、A群であっても胃がんになることがあるというものです・・・これについては次回以降に。