経鼻内視鏡ブログ

2012年3月18日 日曜日

胃潰瘍の深さによる分類

皆さんは日常の何気ない会話の中でこんなやりとりをしたことありませんか?
「最近、よく胃が痛くなるのよね。」 「もしかして胃潰瘍とかになってるんじゃない?」 
皆様の会話にあまりにも自然に入り込んでいる「胃潰瘍」は胃痛をきたす病気の代表と思われています。

そもそも胃潰瘍とは
そもそも胃潰瘍というのは、胃や十二指腸の壁に傷が付き粘膜の下までえぐられた状態をいい、十二指腸潰瘍と合わせて「消化性潰瘍」と呼ぶこともあります。胃はペプシンという消化酵素と塩酸を分泌します。その消化作用はかなり強力で、空腹時はPH1~2(強酸性)、胃液の分泌量は1日あたり1~2リットル!と言われています。こんなに多量で強力な胃液であれば胃壁自体も消化されそうに思われますが、普段は胃の粘液分泌や胃粘膜の血流などが防御因子となり、バランスがうまく保たれることによって胃の粘膜は傷がつきません。しかしストレスや喫煙、過度な飲酒、過労などによって胃液と胃粘液の分泌のバランスがくずれて潰瘍ができてしまうことがあります。またピロリ菌の感染により胃の粘膜で炎症を起こし、粘膜を障害して潰瘍ができてしまうという機序も起こりえます。 
(参照)胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは


胃・十二指腸潰瘍の分類には様々な方法はあります。
潰瘍ができる部位による分類(胃角部潰瘍、幽門部潰瘍など)、個数による分類(1つであれば単発性潰瘍、2個以上であれば多発性潰瘍など)、潰瘍の経過による分類(できたばかりで出血の心配があるものは活動期潰瘍、治りかけの時期と判断できるものは治癒期潰瘍など)などがあります。現在、臨床の場で最も多用されるのは「胃潰瘍の経過による分類」でしょうか。
ところが今回このブログ記事では、あえて「胃潰瘍の深さによる分類」を解説します。まずはイラストから。基本知識として、胃壁は内から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜層の4層構造をなし、粘膜層のみの障害を『びらん』といい、粘膜下層より深い障害を『潰瘍』といいます。潰瘍が深いほど重症なのは言うまでもありません。


 

いかがでしょうか?
初めてご覧になる方もいらっしゃると思いますので、それぞれについて少し解説を入れていきますね。胃潰瘍はその深さによって4段階に分類されます(かつての消化器の名医・村上忠重氏により4段階に分けられ、現在は村上分類とも呼ばれます)。「UL」は「ulcer」つまり「潰瘍」を意味します。

UL-1:粘膜のみの組織欠損で「びらん」と呼ばれます。
潰瘍は粘膜下層より深い組織欠損をいいますので、この所見が見られた場合は「びらん性胃炎」と診断される場合があります。ただし、胃粘膜が傷つき損傷していることに変わりは無く、放置すると潰瘍へ進行する危険があります。
UL-2:筋板粘膜を超えて、粘膜下層に達する組織の欠損をいいます。
胃痛、心窩部痛、吐き気などの症状が強くでる場合があります。
UL-3:組織欠損が(固有)筋層にまで達するものをいいます。
2と3は筋肉が傷付いて出血を伴いますので、上記の症状に加え、胃の激しい痛みのほか、吐血やタール便(コールタール様の黒い便です)を伴う場合があります。
UL-4:組織欠損が(固有)筋層を超え、漿膜層(しょうまくそう)に達しているものをいいます。
図の通り、胃の壁を貫く寸前・貫通する場合もあり(これを穿孔といいます)、腹膜炎を併発して大変危険な状態で、輸血や緊急手術の適応になる場合がほとんどです。ここまでの深い潰瘍では大量の吐血や下血のために出血性ショックに至る危険も相当高いです。


胃は身体の中で最もデリケートな臓器と言われています。
とても繊細なので、ひとたび傷付いてしまうと、なかなか立ち直って元気を取り戻すまでに時間がかかります。毎日の食事やお酒・煙草などの嗜好品、十分な睡眠など生活習慣を改善するだけでも胃の負担は軽減できることはあります。しかし、潰瘍ができていることに気づかず過ごしていると、ある日突然信じられない胃の痛みがやってきます。ご自身のためにも、まずは胃内視鏡検査を受けてみませんか?経鼻内視鏡検査の利点は「胃はどんな様子か?」をダイレクトに目でみて分かるという点で、楽に検査を受けられます。


投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック