経鼻内視鏡ブログ

2012年4月28日 土曜日

日本の保険医療制度の意義

今回は当院の医療事務員による記事です。

(以下、始まり)

皆様は病院を受診する際に何を持って行きますか?
【保険証】を必ずもって行くと思います。

この【保険証】ですが、病院の受付の勤務をしていますと、たまに忘れてきてしまう患者様がいらっしゃいます。その場合、お会計は全額自費でご清算して頂く ようになるのですが、「本日は保険証をお忘れなので、全額自費でご清算して頂きますが宜しいでしょうか?」と 伺うと、とても不安な様子で「いくらかかりますか?」と質問されてくる方がほとんどです。保険証をもって医療機関を受診するというのは当たり前のようなこ とですが、見えない安心があったのですね。

今回は、この保険証、つまり【保険医療制度の意義】についてお話ししていきたいと思います。
まず、皆様はなぜ保険証を持っているのか?・・・それは、我が国には世界に誇れる【国民皆保険制度】というものがあるからです。日本における医療保険制度 は国民皆保険制度と言われ、全ての人が保険に加入する事が義務づけられています。日本の公的医療保険の運営者は、政府、企業、市町村など複数ありますが、 どの保険に加入していても全国で同様の医療が受けられます。年齢や条件によっても異なりますが、一般的には、医療機関を受診した際には、総額の3割分を自 分で支払い、残りの7割分については医療機関が患者さんが加入している保険者へ請求をしているのです。ですから比較的安価で医療を受けることができている のですね。

【保険医療制度の意義①】 国民が安価に医療を享受できる

*日本の医療費がいかに安価であるのか、盲腸で手術入院した際の医療費で比較してみましょう。
≪盲腸での入院≫
    日本;約37万円  (入院7日)
ニューヨーク;約240万円 (入院1日)
    香港;約152万円 (入院1日)
  ロンドン;約115万円 (入院5日)
   グアム;約55万円  (入院5日)  

日本の医療費が海外と比較してあまりにも安価設定であることは知られていますが、比較してみるとあらためて日本の医療がいかに安価なのか分かりますね(国が設定した価格なのです)。そ ういえば海外旅行の時に病気になって高額な医療費を支払ったという話も聞いたことがあります。ついでに言うと、日本では救急車が無料なのは当然のことです が、海外では一回の出動で4~5万円かかる地域もあります。 


・・・さて、皆様はこの国民皆保険制度により安価な医療を受けられること以外に、どんなメリットを思いつきますか?
保険証は日本全国どこの医療機関でも使える→皆様は同じ条件で、自分の受けたい医療を全国の医療機関から選ぶことができるのです。

【保険医療制度の意義②】 国民が質の良い医療機関を選別できる

仮に国民皆保険制度がなければ、例えば盲腸で入院する際に
A病院は、評判がよく医療費が150万円かかる
B病院は、評判は悪いが、医療費は30万円程度である
こんなふうに費用面での条件が異なることになるので、病院選びの基準が質か費用のどちらにに重点を置くのかで選ぶ病院が変わってしまいます。つまり、受け られる医療が貧富の差によって変わってしまうことになるわけです。また、病院選びも病院の評判や、病院ごとに異なる医療費との兼ね合いで大変になることで しょう。

我が国の【国民皆保険制度】では、保険証は日本全国どこの医療機関でも使えて皆様は費用の条件が同じ中、患者さんは良い医療を受けることだけに集中して評判のいい病院をぶことができるのです。
現在はインターネットが大分普及しているのだから、家から近いからといって評判の悪い医療機関を選んだりすることなく評判のいい病院を選び、質の高い医療 を受けたいですよね。実際当院では、口コミや評判などを聞きつけてかなり遠方からの患者様がいらっしゃいます。当院は神奈川県にありますが、北海道・東 北・関西・四国などからでもわざわざ新幹線や飛行機を乗り継いで来院してくださるのです。それは、胃大腸内視鏡検査や肛門の日帰り手術を受けたい患者さん が良い医療を受けることだけに集中して病院を探した結果、当院を選んで受診して下さるからなのです。

(以上、終了)

・・・いかがでしょうか。基本部分は網羅されていますね。
つけ加えるならば、保険医療制度は「まがいもの医療を排除できる」という重要な意義もあるのですが、これについてはまたの機会に。

投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック | 記事URL

2012年4月 5日 木曜日

胃切除後の吻合部潰瘍とは

このタイトルをご覧になって「え!?大変な思いをして手術をしたのにまた違う病気になるの?」と思うかもしれませんがご安心ください。この吻合部潰瘍、実はあまり多くみられる症例ではないんです。

『吻合部潰瘍(ふんごうぶかいよう)』とは・・・
胃癌や胃十二指腸潰瘍の手術をした患者さんの吻合部(つなぎ目)に出来る潰瘍のことです。
吻合部潰瘍は、術後約1~2年以内に起こることが多く、切除胃と十二指腸を吻合した部位に潰瘍ができるため、空腹時の上腹部痛・胸やけ・悪心・嘔吐など、普通の胃潰瘍や十二指腸潰瘍とそっくりの症状が現れます。また、出血を伴う場合は吐血や下血を認めるケースもあることなども通常の消化性潰瘍と共通です。
(参照) 胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは

通常、胃や十二指腸の病気で胃切除術が行われる場合は、良性でも悪性でも胃酸分泌がなくなるような手術法=減酸手術(亜全摘術 or 迷走神経切断術)が行われるため、吻合部に潰瘍はできにくいとされています。では、なぜ潰瘍ができてしまう症例があるのでしょうか?
その理由として
①胃切除し消化管を再建した部位付近の血流障害が起こっている。
②胃の幽門腺が残存していると、そこから分泌されたガストリンという消化管ホルモンによって胃酸分泌が亢進し、これが粘膜など細胞組織に障害を起こして潰瘍形成する。
③潰瘍の出血や穿孔などで緊急手術、あるいは Palliation(緩和)目的の手術で減酸処置を行ってない時、あるいは減酸手術を施行したが不十分である
などの原因が挙げられます。


胃の主な働きは食べ物を消化することですね。
高い酸性の胃液を分泌して食べ物を消化するため、術後の小さくなった胃に対しても術前と変わらない胃液分泌量では胃粘膜や胃とくっつけた十二指腸や小腸は簡単に傷ついてしまいます。また、消化管をはじめ人の身体に傷ができると、もとの皮膚や粘膜の状態に戻るには、血液からたくさんの酸素や栄養をもらい、傷(潰瘍)の修復をします。ところが胃液など粘膜を傷つけてしまう要因があると、潰瘍が治るまで時間がかかるものです。
特に術後などは、その修復まで長くて数年かかる場合もあるくらいなのです。


・・・・あまり多くない症例と言っておきながら、記事にするとこんなにも書けるのですね。
手術後も身体の一部が変わるのでご自身の身体でありながら戸惑うことも多いでしょう。私たちは少しでも安心して皆様が毎日を過ごせるようサポートできればと考えています。吻合部の潰瘍以外にも新しい病変ができたりしていないか、胃のチェック(つまり内視鏡検査)をしっかり行ってさえいればを恐れて恐々と生活する必要もありません。「手術はもう何年も前だけど、内視鏡はしばらくしてないなぁ。」という方、ご自身やご家族のためにまずは今の胃の状態を見直してみませんか??

投稿者 医療法人社団LYC ららぽーと横浜クリニック | 記事URL