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ピロリ菌がいなければ胃がんにならない?

2018/06/01

日本人の死因第1位である“がん”の中でも、罹患数1位・死亡数3位(2016年:国立がん研究センター発表)である“胃がん”。その主な原因は“ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)”という胃に生息する細菌の感染と言われています。
では、ピロリ菌に感染していない人は胃がんにならないのでしょうか?
胃癌写真
まずはピロリ菌ついて簡単にご紹介したいと思います。

ピロリ菌とは?

ピロリ菌についてざっと説明をします。ピロリ菌のイラスト
胃がんの主な原因であると言われるピロリ菌とは「ヒトなどの動物の胃の中に生息するらせん型グラム陰性微好気性細菌」のことです。胃液は強酸性であるため細菌は生息できないとされていた胃内部で、ウレアーゼという酵素を作りだし胃酸を中和することで自分の身を守って生息しています。
このピロリ菌の持続感染によって、萎縮性胃炎(慢性胃炎)、胃・十二指腸潰瘍や癌、MALTリンパ腫などの消化管疾患のほか、突発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹など様々な疾患の原因にもなるといわれています。

様々な検査法(尿素呼気試験や血中・尿中抗H. pylori IgG抗体検査、迅速ウレアーゼ試験などの検査)でピロリ菌に感染していると診断された場合は、

1種類の胃酸分泌抑制剤(PPI:オメプラールなどのプロトンポンプ阻害薬 or P-CAB:カリウムイオン競合型アシッドブロッカ=タケキャブ)
2種類の抗生物質(アモキシシリンとクラリスロマイシンもしくはメトロニダゾール)

を組み合わせた計3種類の薬を1日2回1週間服用して除菌治療を行います。
では、この治療によって無事にピロリ菌が胃の中にいなくなれば胃がんのリスクもなくなって安心と言えるのでしょうか?
実は普段の生活習慣も胃がんに大きく関係しているのです……。

ピロリ菌がいなくても!?

胃の内部は、胃粘膜や胃粘液などの“防御因子”によって“攻撃因子”である強酸性の胃酸から守られています。
しかし、辛いものや熱すぎる・冷たすぎるものなどの刺激物やアルコールの過剰摂取、暴飲暴食、早食いなどの食生活の乱れ、睡眠不足、ストレス、喫煙、非ステロイド系消炎鎮痛剤(アスピリンやロキソニンなど)の長期服用などによって両者のバランスが崩れると、胃や十二指腸の壁の表面に炎症が起きたり溶けたりします。
これががんの発生母地となる“胃炎(十二指腸炎)”や“胃潰瘍(十二指腸潰瘍)”と呼ばれる状態です。
この状態が長く続くことでがんの発生率が上がると言われているのです。つまり、大事なのは胃粘膜(防御因子)を保護し、胃酸(攻撃因子)の過剰分泌を抑えることで、がんの発生母地を作りにくくすることです。

では、実際どのような方法があるのでしょうか。

胃粘膜保護と胃酸分泌抑制が必要

胃粘膜は胃酸によって胃壁が溶けるのを防ぐことはもちろん、その潤滑性によって摂取した食物と胃壁が直接触れて粘膜が損傷を受けないようにもしてくれています。胃粘膜がなければ、あっという間に胃はボロボロ…というわけです。
そんな大事な胃粘膜を守るにはどうしたら良いのでしょう。

①生活習慣を整える

長時間胃が空っぽの状態が続くと、胃液だけが分泌されて胃粘膜が荒れてしまいます。1日3食、決まった時間になるべく消化の良いもの(柔らかめのご飯・うどん・豆腐・白身魚・煮野菜・乳製品など)を食べるよう心がけてください。
揚げ物や塩分の多い物・甘い物・カフェイン・アルコール類の過剰摂取は胃酸の過剰分泌を促すので要注意です。また、喫煙や睡眠不足、ストレスも胃酸の分泌を促進し胃を荒らす原因になります。

②内服薬を使用する

胃内部の防御因子と攻撃因子のバランスが崩れた時には、胃粘膜保護・修復作用のある薬や胃酸の分泌抑制作用のある薬を服用し、本来のバランスに整えます。胃にカプセル剤が入ったイラスト

a)胃粘膜保護薬……レバミピド(ムコスタ)、テプレノン(セルベックス)、スクラルファートなど。胃粘液量や血流量を増加させることで胃粘膜の保護・修復を促す薬です。
胃粘膜の炎症やびらん、消化性潰瘍の治療に使用されます。非ステロイド系消炎鎮痛薬を内服する場合は、同時に処方されることも多くあります。

b)胃酸分泌抑制薬……ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):ファモチジン(ガスター)、ニザチジン(アシノン)、ラフチジン(プロテカジン)など及びプロトンポンプ阻害薬(PPI):ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾールナトリウム(パリエット)、エソメプラゾール(ネキシウム)など。
胃壁細胞のヒスタミンH2受容体やプロトンポンプにそれぞれ作用し、胃酸分泌を抑制する薬です。消化性潰瘍のほか、胃食道逆流症(逆流性食道炎)の治療にも使用されます。

最後に…

私たちの胃は常に働き続けており、ほんの些細なきっかけでダメージを受けてしまいます。ダメージの蓄積は胃がんのリスクも高めてしまいますので、できるだけ胃に優しい生活を心がけてください。また、ピロリ菌がいないからといって油断せず、定期的に胃の検査を受け、適切な治療を受けることをお勧めします。

以上で今回のブログは終わりですが、ららぽーと横浜クリニック胃腸科では、胃内視鏡検査やピロリ菌検査・治療、上部消化管の各症状に対する内服治療を行っていますので、気になる方は一度ご相談ください。笑顔の胃のイラスト