経鼻内視鏡ブログ

2011年12月25日 日曜日

採血ペプシノーゲン検査は胃癌の検査です

血液検査で胃癌になりやすい人を見つけることができます。


企業の検診で最近行われるようになってきた「ペプシノーゲン検査」というものがあります。
これは、採血の項目の一つです。
企業の検診では、採血が必ず行われるので、項目を追加するだけなので、簡単に結果がわかります。


この「ペプシノーゲン」(=ペプシノゲン)とは、慢性萎縮性胃炎の指標です。
ペプシノーゲンは胃液に含まれる消化酵素のもとで、血液中にも存在しています。
加齢、ストレス、飲み過ぎなどで胃の粘膜は次第に萎縮していき、血液中のペプシノーゲン量も低下していきます。
血液中のペプシノーゲンを測定することで萎縮性胃炎の進み具合を知ることができるのです。
つまり、検診の結果が「ペプシノーゲン異常あり」だと「慢性萎縮性胃炎の確率が高い」ということになります。
(参照)急性胃炎・慢性胃炎とは


「慢性萎縮性胃炎」は胃癌の発生母地である
ことがわかっていますから、
間接的に、「ペプシノーゲン異常あり」→「胃癌要注意!」
という意味になり、胃内視鏡検査(胃カメラ)が必要です。

しかし、ペプシノーゲン検査にも欠点があり、慢性萎縮性胃炎と関係なく発症するタイプの胃癌の発見には当然ですがつながりません。
例えば、比較的若年者に多い未分化型腺癌は慢性胃炎を母地としませんし、進行癌がある場合も慢性萎縮性胃炎がなければペプシノーゲン陽性にはならないことが本質的な欠点と言えます。
繰り返しになりますが、ペプシノーゲン検査はあくまでも慢性萎縮性胃炎を診断するものです。



専門家の見地から言うと、検診で行われている「ペプシノーゲン検査」や「胃のバリウム検査」は癌を見つけるという観点では精度が良くありません。
胃の症状があれば、一番精度が高い胃内視鏡検査(胃カメラ)が保険適応で受けられますから、是非そうしたいものです。
今では鼻からの胃カメラの登場で、一気に敷居が下がりました。

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2011年12月25日 日曜日

胃液vs.膵液

ある日、友人に質問されました・・・「胃液と膵液とどちらが強力なの?」

胃液と膵液と「強さ」で比較することは不可能です。
働きがかなり異なるからです。


胃液は、胃壁中にある胃腺から一日に1.5リットル分泌される消化液です。
胃液は通常、無色透明でやや粘り気のある酸性の液で、その分泌には神経やホルモンが関係しているといわれています。

胃酸には塩酸と酸性条件下で活性化する蛋白分解酵素(ペプシン)が含まれ、これによりたんぱく質を分解して小腸での吸収を助けます。
また、細菌やウィルスを殺菌したり、一部の有害物質を分解したりすることにより、菌から身を守る生体防御の役割も果たします。例えば、コレラ菌は胃酸によってほとんどが死滅するので大量の菌が入らない限り感染は起こりません。ほとんどの細菌は、胃液によって殺菌されますが、なかには胃酸に強く少ない菌(100個以下)でも感染するものもあります。また、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃酸を中和して胃の内部で生息すると言われています。
(参照)「ピロリ菌とは」


膵液は、膵臓で作られて外分泌腺から一日に1リットル分泌される分泌される消化液です。
膵液は、肝臓~総胆管から流れてくる胆汁と合流して活性化され、十二指腸に流れます。
この時、胃液の酸性を中和する働きもあります。
膵液は三大栄養素(たんぱく質、炭水化物、脂肪)の全てを消化できるとされています。



・・・で、どっちが強いのでしょうか。

私は、しつこい脂肪を分解できる点で「膵液」と答えてしまいそうですが、同僚の医師に聞いたところ、あっさり「胃液」と答えられました。
強い酸性(pH2程度)だからだそうです。

結局、イメージで答えるしかない質問ですね。

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2011年12月25日 日曜日

慢性胃炎と胃癌の関係

慢性胃炎とは「胃粘膜に慢性炎症性細胞浸潤がみられる病態」とされています。

慢性萎縮性胃炎とは、胃の腺細胞(胃酸を分泌している腺)が萎縮して修復されずに進行する胃粘膜の病気です。胃粘膜が萎縮すると胃酸の分泌が減少します・・・・イメージとしては、慢性的に炎症が起きて胃の粘膜が元気を失っている状態のことです。
(参照)慢性胃炎とは

慢性胃炎の原因は、塩分の多い食事とヘリコバクター・ピロリ菌の感染であると言われています。
症状としては上腹部の不快感や胃もたれなどが挙げられますが、慢性胃炎特有のものはありません。
一種の加齢変化とも考えれており、自覚症状がない場合もあります。


さて、本題;「慢性胃炎と胃癌の関係」です。

一般的に慢性胃炎は「胃癌発生のもと」であると言われています。
慢性胃炎すべてが「前癌状態」ではありませんが、なかでも萎縮性胃炎は胃癌が発生する可能性が高いことが報告されています。そこで、私たち専門家は萎縮性胃炎から発生するであろう胃癌を胃内視鏡(胃カメラ)で少しでも早い段階で発見しようとしています。
萎縮性胃炎の胃粘膜はゴツゴツしており、微小な胃癌は発見が困難ですから、丁寧な観察が重要です。


近年、ピロり菌の胃への感染が萎縮性胃炎(慢性胃炎の一種)を引き起こし、腸上皮化生という粘膜変化をおこして胃癌を発生させることがわかりました。
WHO(世界保健機構)は「ピロり菌は胃の発癌物質の一つ」と発表し、ピロリ菌を発癌に関係する危険因子と指定しました。(ピロリ菌に感染していると年間「0.4%」の確率で胃癌になるという予測が報告されています。)
つまり、「ピロリ菌感染」→「慢性胃炎」→「胃癌」という経路があるわけです。

そこで、胃癌予防のためにはピロリ菌を除菌することが大切になるわけです。
標準的な除菌方法(ピロリ菌に効くとされている抗生物質を一週間服用)だけでも80%は除菌可能です。
(他の抗生剤と組み合わせると95%以上は除菌が可能です。)


胃炎の軽い患者であればあるほどピロリ菌を除菌しておく効果が大きいとされています。
言い換えると、若い人にとっては特に、ピロリ菌を除菌することが慢性胃炎や胃癌の予防策として重要だということです。

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2011年12月25日 日曜日

胃癌の予防法とは?

ヒトの体にできる「癌(がん)」の代表である胃癌は年間約10万人が罹患しているとされています。

胃癌は正常な粘膜の細胞が悪性化してできるのですが、癌化のメカニズムは、まだ完全にわかっていません。
概ねは、胃粘膜の抵抗力や免疫力が弱っている時に体内に入った発癌物質によって序々に癌化すると言われています。
(参照)実際の胃癌

近年の日本では胃内視鏡(胃カメラ)の技術革新による「早期発見」や「早期治療」が行われている結果、生存率が向上してきました。


・・・でも、可能なら胃癌になること自体をなくしたいものですね。
そこで、今回は胃癌を予防するためにできることは何なのかを考えました。


胃癌の発生に関係する要因としては・・・

・高濃度の塩分摂取が胃の粘膜を壊して発癌を助長すると考えられています。
冷蔵庫の普及以前の日本人の胃癌の罹患率の高さの原因は「塩漬け保存」にあるとさえ言われています。
・喫煙者は非喫煙者に比べて2~3倍の胃癌になるリスクがあると報告されています。
喫煙がなぜ胃の病気に関係するのか、よく理解できませんが、実際にそうなのです。
・緑黄色野菜や果物、緑茶の成分中のビタミンCやカロチノイドは抗酸化作用があり、発癌抑制効果があります。
カロチノイドとは人参、トマト、ほうれん草、柑橘系フルーツなどに含まれる色素の成分の総称です。
・胃に住むピロリ菌は、癌化した胃の細胞の増殖させるとの報告があります。
(参照)ピロリ菌とは


要約すると、胃癌の予防のために現段階でできることは、
「新鮮な野菜や果物をしっかりとり、塩分の摂取を控え、禁煙に努め、ピロリ菌は除菌しておく」
ということです。
 


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2011年12月25日 日曜日

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎とは、胃液や胃の内容物が食道に逆流して食道の粘膜に炎症を起す病気です。
炎症が強いと出血したり、狭窄や潰瘍が出来ることもあります。


症状としては、げっぷ、胸やけ、胸痛が主な症状であり、食後や就寝後に強く現れることが多いです。
また潰瘍や狭窄がひどくなると、胸がつかえている感じ、出血、胸痛等も出現します。
なので、胸痛、胸やけ、げっぷ、などの症状があったら胃内視鏡検査(胃カメラ)を受ける事が必要です。
(心筋梗塞や食道癌などでも同じ症状を起す事があります。正しい診断がまず第一です。)

*万が一、治療が遅れて食道が狭窄してしまったら、場合によっては内視鏡による拡張手術が必要となります。そうならないためにも、症状がある場合は早めに診断と薬物治療を開始するべきです。



胃内視鏡(胃カメラ)で逆流性食道炎と診断されたら、基本的には薬の内服で治療します。

直接の原因である胃酸の分泌量を抑えて、胃の粘膜を保護するH2ブロッカーや、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が中心となります。
特にプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、副作用も少なく、強力に胃酸の分泌を抑えます。
また胃や食道の運動を調節する消化管運動賦括剤も補助的に用いられます。

食事については、暴飲暴食を避け、酸っぱいもの、嗜好品や香辛料、アルコール等を控えめにし、夕食は早めに済ませて就寝まで4~5時間あければ理想的です。

(参照)逆流性食道炎とは


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