経鼻内視鏡ブログ

2011年12月25日 日曜日

「アニサキス条虫症」には胃カメラ(胃内視鏡検査)

今日は胃腸の寄生虫に関するお話です。
「アニサキス条虫」・・・ご存知でしょうか?

「アニサキス条虫症」とは、魚介類に寄生している「アニサキス」という寄生虫の幼虫を生で食べてしまった時に、その幼虫が人の胃壁や腸壁に食い込み、激しい腹痛(胃痛)が起きるという病気です。
腹痛に限らず下痢、食欲不振といった症状が出現することもあります。

つまり、「魚介類を食べた後に起こる激しい胃痛」が「アニサキス条虫症」の典型的な症状なのです。
タラ、カレイ、サンマ、サケ、ニシン、サクラマス、イワシ、サバ、ハタハタ、スルメイカなどは要注意です。

普通に見かける胃炎や胃潰瘍の痛みと区別は不可能ですから、症状が上記のようなら、診断には胃カメラ(胃内視鏡検査)が必須です。
幼虫が胃の壁にめり込んでいる場合は、胃カメラで虫体を除去すればたちどころに症状が消えます。

(参照)実際にあった一例


実はこの「アニサキス症」・・・近年増加しています。
日本の冷蔵技術が発達し、新鮮な魚介類が大量に市場に出て家庭にまで届くようになり、新鮮な寄生虫!?が、同時に消費家庭に届いているからかもしれません。
(寄生虫は通常の低温では生きています。加熱処理かマイナス20℃以下の冷凍によって死亡すると言われています。)

予防法としては以下のようにするしかありません。
・生魚(刺身)はなるだけ食べない。
・魚介類は確実に「加熱調理」する。
・もし生魚を食べて腹痛があれば「胃内視鏡検査」を受ける。


・・・・でもですね、生の魚介類がない人生なんて・・・私には無理です!!
美味しい「刺身」は、これからの季節の食卓に欠かす事は出来ません!!

私は今後も刺身を食べます(宣言)。
そして、胃痛が出現したら素直に胃カメラを受けます。
今の時代、専門家を受診すればラクチンに胃カメラを受けられるのですから!


*最後にトリビア?
「アニサキス」についてもっと専門的に書くと、いくつか種類があります。
・正式名「アニサキス・シンプレックス」⇒白色半透明、魚の体内で渦巻状をしています。
・正式名「シュードテラノーバ・テシピエンス」⇒茶色っぽく、一般的には渦巻状をしていません。
どちらも体長2~3センチの線虫です。私の経験した症例は「シンプレックス」がほとんどです。

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2011年12月25日 日曜日

LG21でピロリ菌退治!?

ピロリ菌は胃癌や胃潰瘍や慢性胃炎に関係する細菌です。

(参照)ピロリ菌とは


さて、市販されているLG21というヨーグルトでピロリ菌を退治できるというのは本当でしょうか?

「LG21」とは乳酸菌「lactobacillus gasseri OLL 2716株(ラクトバシルスガッセリーOLL 2716株)」の略号です。つまり「乳酸菌の一種」という程度の認識でよいでしょう。

「LG21」には胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんの原因であるピロリ菌に対して強い抗菌作用があることが発見されたのです。
研究チームはピロリ菌の保菌者30人を対象にLG21配合のヨーグルト90gを1日2回、8週間食べてもらいました。

すると・・・!!
26人にピロリ菌の減少がみられ、そのうち3人は菌が消失したそうです。
6人に実施した内視鏡検査でピロリ菌が1/10~1/100まで減少したという結果だそうです。

ヨーグルトとして簡単に経口摂取できるLG21乳酸菌ですが、現時点では完全にピロリ菌を除菌できるとは言えないため、「治療薬」というよりは「予防目的の食品」として期待されています。

*ちなみに、「ピロリ菌」は医療機関を受診すれば95%以上は1週間の内服薬で除菌可能です。


*LG21はピロリ菌の除菌の他に「便秘」に対しても効果を発揮します。
善玉菌である乳酸菌が腸内で増殖すると、乳酸、酢酸が代謝物として発生します。
この代謝物により、腸内が弱酸性に保たれ悪玉菌の増殖が抑えられ腸内環境が正常となります。
さらに乳酸、酢酸は腸に刺激を与えて、その動きを活発にさせます。
そのため食物の消化吸収もスムーズに行われ、便秘知らずのお腹になるわけです。

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2011年12月24日 土曜日

胃炎か胃癌か見分けがつかない! 胃内視鏡診断のココロ

胃の内視鏡検査(胃カメラ)を受けたことがありますか?

胃の病気による症状はたくさんあります。
胃の痛み、胃もたれ、胸やけ、吐き気、腹痛、腹部膨満感、黒色便、下痢・・・


症状が出たり出なかったりする病気もあるので、お薬で症状がなくなったとしても安心は禁物です・・・胃内視鏡検査を受けると診断がほぼ確定します。


実はこの胃内視鏡検査(胃カメラ)ですが、医師の立場からするとなかなか奥が深いのです。
まず、(患者さんが楽に検査できるかどうかは別にして)挿入手技的には胃の内視鏡検査は大腸内視鏡と比較すると単純です。
このことは、胃の内視鏡検査を行えるけれども大腸内視鏡を行えないクリニックがあることからも容易に想像できるでしょう。


ところが、胃の内視鏡検査は別の意味で難しいのです・・・肉眼で行う診断や判断が難しいのです!!


胃の表面は、特に慢性胃炎がある場合はゴツゴツ(デコボコ?ザラザラ?)しています。
これが本当に慢性胃炎によるデコボコなのか、あるいは癌があるのか、見分けがつかないことがあるのです。
(もちろんプロですから、ほとんどの場合は一目で鑑別できますが)

そこで、インジゴカルミンなどの色素を散布して、デコボコ具合をもっと鮮明にしてわかりやすくしてから再度観察したりします(色素散布によってはっきりしてくる癌も存在します)。

しかし、いくら丁寧に観察したとしても肉眼的な判断だけでは「予測」にすぎないという面もあり、「念には念を」の精神で細胞を一部採取して病理組織検査(顕微鏡検査のことです)に提出することもあります。


そういう意味では、胃内視鏡検査(胃カメラ)においては医師の眼力や判断力が問われるということになります。
診断が「胃炎」と「胃癌」とでは、患者さんの立場から見ると天国と地獄の違いがあります。

(参照)「萎縮性胃炎に見える胃がん」


より正確な診断と判断が行えるように、内視鏡医は修練に励むココロを常にもっておかねばなりません。
(私の先輩医師で「心はいつも研修医です」と常々おっしゃる先生がいました。)

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2011年12月23日 金曜日

内視鏡機器の洗浄と消毒;過酢酸の利点と欠点について

医療機器は感染の危険度別に3段階(critical,semi-critical,non-critical)に分類されています。
消化器内視鏡(胃カメラや大腸カメラ)はsemi-criticalに属し、高い水準の洗浄と消毒が必要です。

さて、現在、医療機関で用いられている洗浄消毒液のひとつに過酢酸があります。


過酢酸(製品名;アセサイド6%)の利点は蛋白質変性作用をもち、短時間で高い殺菌作用と安全性を併せ持つ
ことです。
一方、生体内では容易に分解されるため毒性が低く、日本では食品分野にも用いられているという実績があります。
高度の内視鏡洗浄消毒が自動で17分程度で完結するのは消毒する医療者にとって大きな魅力です。

現在の日本の内視鏡消毒の趨勢は高水準洗浄消毒へと向かっています。
その観点では、過酢酸による洗浄は時代の要請にかなったものだと言えます。

欠点としては酢酸臭があり、専用のクローズドの内視鏡洗浄消毒装置が必要であることや、内視鏡自身に与えるダメージが大きいことです。

現在の保険医療報酬制度の実情から考えると、長期的にはコストがかさんだ結果、医療機関を疲弊させることになるかもしれません。

いつかは自由診療という形で、患者さん側からも高水準消毒に対する経済的投資が必要になるかもしれませんね。

他の洗浄消毒液についてはこちら

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2011年12月23日 金曜日

胃透視検査(バリウム検査)vs.胃内視鏡(胃カメラ)

胃の検査、あなたはどちらを選びますか?

胃の検査は大きく分けて2つあります。
一つは胃透視、すなわちバリウム検査で、もう1つは胃の内視鏡検査、いわゆる胃カメラです。
・・・・「胃の検査は2種類ある」と言われたら、患者さんはどちらを受けるほうが良いのかわからなくなってしまいますね。

胃透視とはレントゲンにうつるバリウムという造影剤を飲んでいただき、胃の写真をとる検査です。
途中で発泡剤というガスの出るお薬をのんで頂き、胃を膨らませ「二重造影」という方法で胃の粘膜のでこぼこを浮き上がらせます。
胃のいろいろな角度から写真を撮りますので、レントゲン台の上でぐるぐる向きをかえて頂きます。
検査は通常10~15分です。一般の胃癌検診は、この胃透視検査で行っている場合が多いです。

内視鏡検査(胃カメラ)とは、食道、胃、さらに十二指腸を内側から直接見ることができる検査法です。
直径約9ミリ程度の電子スコープを口を通して胃の中に入れていくわけです。
直接胃の粘膜を見ることができるので、色の変化や細かい病気がよくわかります。
また病変部から組織を取って(生検)調べることが出来るので、癌の早期発見などに役立ちます。
検査時間は通常5~10分です。


でもこの両者の検査、果たして本当に胃癌が発見出来ているのでしょうか??

実は、何と!
胃透視を受けて異常なしと言われた方の中で、胃カメラを受けて何人も癌が発見されています!


つまり、胃透視の検査には限界がある!
 胃内視鏡検査(胃カメラ)は、直接胃の粘膜を光で照らして診るわけですから、その色も凸凹もよく分かります。
さらに、怪しいと見れば、そこの細胞を取って病理検査でもって癌かどうか判定できます。

しかし、胃透視はいわば胃の壁にバリウムをぬりつけてその起伏を見るという、間接的な検査です。
だから、凹凸のない病変はまったく分かりません。
例えば胃カメラで見ると粘膜が少し赤く変化しているというだけの胃癌(凹凸は全くない!)は、胃透視では完璧正常に見えます。
(この場合は、いくら名医がバリウム検査を行ってもフイルムに写らないのですから、検査の性質上の限界であると言わざるを得ません)

つまり、胃透視は平坦な病変や、小さな病変はわかりにくく、おおまかな異常の有無を調べると考えた方が良いということです。
また内視鏡のように直接組織を取ったりすることができないので、胃透視で異常が認められた場合は、内視鏡での精密検査が必要です。


例えて言うならば、
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、「人の顔を見て、その人が誰なのかを当てる」検査であり、
胃透視検査は、「人の影を見て、その人が誰なのかを当てる」検査です。

・・・検査の精度が大きく違うということがおわかりでしょうか。


ではなぜ、現在一般の胃癌検診では、胃透視検査を行っている場合が多いのでしょうか?
その理由は以下の通りです。

1、胃内視鏡検査(胃カメラ)よりも胃透視検査のほうが患者さんにとって楽だと一般的に信じ込まれているから
「胃カメラを飲む」よりも「液体のバリウムを飲む」方が楽なように聞こえます。ところが、実際には胃内視鏡検査(胃カメラ)の検査技術の驚速の進歩によって、技術ある医師にかかれば胃内視鏡検査(胃カメラ)を楽に施行できるようになっています。
2、胃透視検査は費用が安いから
概ねの値段を比較してみると、(10割負担と仮定して)胃内視鏡検査(胃カメラ)は15000円程度、胃透視検査は10000円程度です。
3、胃内視鏡検査(胃カメラ)は医師にしかできない技術であるのに対して、胃透視検査はレントゲン技師も施行可能だから
検診で多くの人数を検査する必要がある状況では、この事実は大きいと思われます。
4、胃透視検査の検査上の限界が、まだ世間一般には知られていないから
「バリウム検査で異常なし」と言われたから大丈夫!と信じ込んでいる患者さんは、いまだに非常に多いです。


私の知り合いの医師で、胃の検診で自分が胃透視検査を受けた、という方を見たことがありません。値段の差以上に、検査の精度が大きく違うことを実感として知っているからです。
医療が進歩するにつれて、胃透視検査で「大きな病気はありません」と言って済ませていた時代は終わりつつあります。私は、近い将来には胃透視検査(バリウム検査)は、廃れて医療界からなくなると思っています。


結論です。
「胃の検査、あなたはどちらを選びますか?」

⇒本当に胃の病気がないことを確かめたい方は、胃内視鏡検査(胃カメラ)を選んでください!

両者の詳しい比較はこちら


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